2019 受賞論文

2019年度の統計データ分析コンペティションに応募いただいた皆様方に感謝申し上げます。審査の結果、受賞論文は以下のように決定しました。各賞を受賞された皆様、おめでとうございます。

令和元年10月18日 審査委員長 総評(PDF:178KB)

2019 受賞論文 高校生の部

総務大臣賞

ワンオペ育児から見る離婚 (PDF:468KB)

竹内 遥、江本 もえ、木下 舞、永井 あゆる(お茶の水女子大学附属高等学校)
離婚の要因を探るため、様々な仮説の下、総人口の影響を除いた偏相関係数を用いた相関分析を行った。その結果、離婚要因の一つが、家庭内で女性のみが家事や子育てを行うワンオペ育児にあることを導いた。その上で、ワンオペ育児を防ぐために、男性の育休取得数を増やすことなどを提案している。

優秀賞

南海トラフ地震に備えて ~指定避難所に3人に1人が避難できず、災害時の医療体制は本当に十分か?~ (PDF:1,079KB)

渡邉 璃里香、吉田 美咲(愛媛県立松山南高等学校)
南海トラフ地震に備えるために、通学している高校から半径3km以内のエリアについて、GISを用い地図上に指定避難所や診療所をプロットすることにより、避難所の分布に空白地帯があり診療所に偏りがあることを指摘した。さらに、幼稚園等の新たな避難所、災害時の医療体制の充実などを提案している。

統計数理賞(統計数理研究所賞)

過疎地域の現状分析と発展に重要な視点 (PDF:736KB)

猪狩 信人(福島工業高等専門学校)
過疎地域の発展に重要な視点を探るため、市区町村を過疎地域とそれ以外に分類し、SSDSEから人口、教育、産業などのデータについて、分布の比較や相関分析を行った。その結果、一次産業の活性化が過疎地域の発展につながることを指摘するとともに、行政機関が資金援助を行うことの必要性を述べている。

統計活用奨励賞(日本統計協会賞)

日本で暮らす外国人の動向から見た多民族化 (PDF:1,888KB)

大段 利々子(広島大学附属高等学校)
多民族化が人口問題解決の鍵になるという仮説の下、SSDSEから人口、地方経済関連データを抽出して相関分析を行った。その結果、外国人比率の高い地域が都市部と地場産業を有する地方とに二極化していることなどを示し、新たな産業の展開が外国人の増加、地方創生につながる可能性を指摘している。

特別賞

旅館及びホテルにおける日本人・外国人宿泊客の都道府県別増減から考える旅館の復活 ―岡山県湯原温泉の視点からインバウンド需要を旅館に取り込む方策― (PDF:1,003KB)

池田 雅子(岡山県立岡山操山高等学校)
生まれ育った温泉地の復興に向けて、インバウンド消費が重要であるという仮説の下、GISソフトを用いた分析や相関分析などを行った。ビジネスホテルと外国人観光客数には正の相関が観察されることから、設備投資を行い、和風のビジネスホテルにするなど、地方の旅館再生モデルを提案している。

香川県の交通事故発生の要因を交通違反件数を基に分析する (PDF:482KB)

宇川 昇吾、宮本 紫苑、山地 悠介(香川県立観音寺第一高等学校)
香川県の交通事故発生件数が多いという問題意識の下、交通事故発生要因を解析するため、交通違反件数を説明変数とする重回帰分析を行った。その結果、香川県と人口規模が近い和歌山県との比較を通し、香川県では一時停止違反の多さが交通事故の発生に深く関わっていることを指摘している。

2019 受賞論文 大学生・一般の部

総務大臣賞

地方創生目標指標に関する変化要因ネットワークの推定とそれに基づく地域間連携策の提案 (PDF:3,205KB)

張 瀚天、白鳥 友風(筑波大学大学院システム情報工学研究科)
地方創生の設定目標について、目標指標に影響を与える変数の相互関係を明らかにするため、共分散行列を用いて要因ネットワーク図を作成し、lasso法による分析を行った。その結果、地域の稼ぐ力が地方創生に重要であることを指摘するとともに、地理的な制約にとらわれない地域間連携を提案している。

優秀賞

我が国における人口増減の決定要因 (PDF:762KB)

竹内 太郎(大阪大学医学部)
都道府県の人口増減について決定要因を探るため、教育、健康・医療分野の指標を説明変数として回帰分析を行った。その結果、高等学校卒業者の進学率、一般診療所数、医師数の増加などが人口増加に影響しているとの結果を得ており、人口減少を克服するための政策立案の基礎資料として提案している。

統計数理賞(統計数理研究所賞)

マルチレベル分析を用いた市町村大学等進学率の決定要因分析 (PDF:1,828KB)

松本 洋輔(一橋大学経済学部)
大学等進学率の地域格差の要因を探るため、都道府県レベルと市区町村レベルの複数の説明変数を同時に扱うマルチレベル分析を行った。結果として、都道府県レベルでは東京または京都までの距離と大学収容率、市区町村レベルでは課税対象所得、知識集約型産業従事者率等が、大学等進学率に影響していると指摘している。

統計活用奨励賞(日本統計協会賞)

市区町村別でみる合計特殊出生率推移の特徴分析 (PDF:1,157KB)

村松 波、熊野 翔、川田 瑛貴(武蔵野大学工学部)
少子化問題の特徴を明らかにするため、子ども女性比を用いて市区町村別に合計特殊出生率(TFR)の推定を行い、2015年までの増減について検証を行った。結果として、東京都区部では港区等の増分が大きいことと、TFRの増分は納税者一人あたり所得の増分との相関が高いことを指摘している。

特別賞

潜在患者数に対する医師偏在の可視化 (PDF:563KB)

眞田 英毅、三浦 萌実(東北大学大学院文学研究科、株式会社社会情報サービス)
医療需要を踏まえた医師偏在の実態を把握するため、潜在的医療需要として入院患者数を二次医療圏別に算出した上でジニ係数を用いて検証を行い、都道府県比較を行った。結果として、医師偏在は、おもに西日本で発生していることを指摘し、都道府県内の医師の割振り配置について提案を行っている。

外国人人口と市区町村の特性との関係性 (PDF:567KB)

西尾 春香(関西学院大学経済学部)
外国人人口と自治体の特性との関係について分析するため、市区町村別の統計指標を用いた重回帰分析を行い、人口密度や製造業等との相関が高いという結果を得た。また、決定木分析、ランダムフォレスト等の追加分析を行い、都市化、働き手不足、特定産業等が外国人人口に影響していることを指摘している。

「広域連携の政策検証」 ―空間計量経済学的手法による実証分析― (PDF:1,078KB)

原 康熙、福田 和生、柳田 はづき(早稲田大学政治経済学部、商学部、社会科学部)
地方自治体の広域連携の効果について検証するため、Moran統計量による空間相関分析を行った。その結果、ごみ処理費用については広域連携の効果が確認され、待機児童についても共通の政策目標が形成された自治体の広域連携においては待機児童数が減少し、行政の効率化を促す可能性を指摘している。

地⽅創⽣実現のロジック ―地域経済活性化のメカニズムを解明する― (PDF:1,718KB)

平原 幸輝(早稲田大学大学院⼈間科学研究科)
地域経済活性化のメカニズムを解明するため、市区町村別の付加価値額を事業従事者数等から重回帰分析により推計し、人口と付加価値額への影響をパス解析により分析した。結果として、労働・医療・福祉・教育といった社会環境の充実が、人口増加と経済活性化を引き起こし地方創生につながると指摘している。

統計専門誌への論文掲載

受賞論文(一部)は、審査委員会による学術論文的審査を経た編集後の論文が、日本統計協会の月刊誌「統計」に掲載される予定です。(月刊誌「統計」のページへ別ウィンドウで開きます。